【2025種牡馬考察】コントレイル産駒の考察

コントレイルの来歴
現役時代
コントレイルは、日本競馬史上8頭目のクラシック三冠馬です。その偉業を無敗で達成したのは史上3頭目であり、父ディープインパクトと親子で無敗三冠を成し遂げた初の例として大きな話題を集めました。2019年のホープフルステークスでデビュー3戦目にしてGⅠ初制覇を飾ると、翌2020年の牡馬クラシック三冠(皐月賞・東京優駿〔日本ダービー〕・菊花賞)を全て勝利し一気にスターダムに駆け上がります。その内容も皐月賞は半馬身差、ダービーは3馬身差、菊花賞はクビ差と劇的で、まさに「ディープインパクトの最高傑作」と評されました。三冠達成後、同世代の無敗牝馬三冠馬デアリングタクト、歴代最強クラスの牝馬アーモンドアイとの“三冠馬対決”となった2020年ジャパンカップでは2着に敗れ初黒星を喫します。しかしそれまでの実績が評価され、2019年最優秀2歳牡馬、2020年最優秀3歳牡馬に選出されました。
2021年、古馬となったコントレイルは春の大阪杯に出走しますが、道悪馬場も影響し3着に敗退。続く天皇賞(秋)でもエフフォーリアの2着に終わり、ファンの期待に応えられない競馬が続きました。陣営は当初から「秋は2戦に全力投球して、(その後)引退したいと思います」と表明しており、有馬記念には出走せずジャパンカップをラストランとする方針を発表します。この有終の美を飾る一戦となった2021年ジャパンカップでは、鋭い末脚で見事優勝。競走馬コントレイルは通算11戦8勝(2着2回、3着1回)という輝かしい戦績でターフを去りました。引退の理由については、「十分な実績を残したこと」「父に次ぐ名馬としてこれ以上無理をさせたくないこと」などが挙げられており、矢作芳人調教師は「無敗の三冠馬として彼の名誉を守るためにも勝って、有終の美を飾りたい」とラストランに臨んだと語っています。
結果、その言葉通り有終の美を飾り、ファンの喝采を浴びながらコントレイルは競走生活に幕を下ろしました。
引退からスタッドインまでの流れ
ジャパンカップ優勝から間もない2021年12月、コントレイルは公式に競走馬登録を抹消し、生まれ故郷である北海道安平町の社台スタリオンステーションで種牡馬入りすることが発表されました。デビュー前から将来の種牡馬として大きな期待を背負っていた同馬だけに、引退後すぐにスタッドインまでの流れはスムーズでした。引退式は2022年の始めに中山競馬場で行われ、福永祐一騎手や矢作調教師とともに多くのファンに最後の雄姿を披露しています(※実際の引退式の詳細は割愛しますが、その人気ぶりが伺えました)。その後は社台スタリオンで新生活を開始し、初年度から多くの良血繁殖牝馬と交配されました。
種牡馬として供用開始した初年度(2022年)の種付料は1株あたり1,200万円と設定されました。この金額はクラシック三冠馬としても破格で、参考までに同じ三冠馬オルフェーヴルの初年度種付料600万円を大きく上回ります。社台グループが「次のディープインパクト」にと期待を寄せていたことが窺える待遇と言えるでしょう。事実、ディープインパクトも初年度種付料は1,200万円でスタートしており、コントレイルも父に並ぶ高評価で種牡馬生活をスタートしました
種牡馬コントレイルの評価と種付け動向
初年度の種付け料は1,200万円(受胎確認後)と、三冠馬に相応しい破格の設定でした。同じ三冠馬オルフェーヴルの初年度600万円と比べても2倍の強気な価格で、社台グループの「次のディープインパクト」候補としての期待の大きさが伺えます。実績に裏打ちされた人気は凄まじく、供用開始から今年まで毎年ブックフル(満口)状態が続いています。以下は年別の種付け料と種付け頭数の推移です:
年度 | 種付け料(受胎条件) | 種付け頭数(交配数) |
---|---|---|
2022年 (初年度) | 1,200万円 | 193頭 |
2023年 | 1,200万円 | 211頭 |
2024年 | 1,500万円 | 205頭 |
2025年 | 1,800万円 | ― (満口) |
※2025年は満口のため正式な頭数非公表ですが、ここまで毎年約200頭前後の繁殖牝馬と交配されています。今年は種付け料がさらに上昇し1,800万円となりましたが、それでも依然高い需要で人気は衰えず、種付け頭数はほぼ前年並みを維持しています。初年度からこれだけの良血繁殖が集まったことで、コントレイルは早くも社台SSの看板種牡馬の一角となっています。とはいえ、ディープインパクト系種牡馬は他にも多数存在し、結果が伴わなければ今後淘汰もあり得ます。まずは2025年デビューの初年度産駒たちの活躍に、生産界・馬主や一口出資者から大きな期待が寄せられている状況です。
産駒の特徴と走りの傾向は?(芝・ダート・距離・早熟性など)
肝心の産駒の傾向ですが、まだデビュー前とはいえ各所で様々な評が出始めています。まず芝向きかダート向きかについては、多くの専門家が「基本的には芝向き」と見ています。コントレイル自身が芝の中長距離G1を勝ち続けた馬であり、その産駒も芝のマイル~中距離が主戦場になるという見立てが一般的です。実際、繁殖相手には欧州の重厚な血統を持つ牝馬も多く配されていますし、その組み合わせから「芝の中距離でこそ持ち味が活きるだろう」という予想がされています。一方で母系に米国的なスピード血脈(例えばStorm CatやUnbridled’s Song系)を多く持つことから、「案外ダート適性も侮れない」という声もあります。コントレイル産駒は骨量がありガッチリした馬も多いとの指摘や、「配合次第ではダート短距離~マイルで大化けする可能性もある」という見解も一部では出ています。つまり、芝で大成しつつダートでも活躍馬が出れば理想的ですが、まずは芝中心のローテで様子を見つつ適性を探っていく形になりそうです。
距離適性に関しては、マイル(1600m)からクラシックディスタンス(2400m前後)まで幅広く対応できる産駒が多いと期待されています。コントレイル自身が3000mの菊花賞まで克服したとはいえ、小柄な体格(約450kg台)で瞬発力に優れたタイプだったため、産駒も極端なステイヤーよりは切れ味を活かせる中距離までが適鵬でしょう。その分、マイル前後の距離にも十分対応できる柔軟性がありそうです。現時点で専門誌などの距離適性評価でも「短距離寄りではなく中距離型」と位置付けられています。一部には「父ディープ譲りの瞬発力と母系由来のパワーを併せ持ち、ダート中長距離で台頭する馬も出るかも」との見方もありますが、まずは芝マイル~中距離路線でクラシックを狙える馬がどれだけ出るかが注目されています。
早熟性・仕上がりについては、意外にも「スロースターターかもしれない」という声もあります。トレーニングセンターの関係者によれば、「コントレイル産駒は総じてサイズは大きくないので仕上げやすい反面、成長がゆっくりで現時点(2歳春)ではまだ本格化途上に映る」とのこと。実際、POG本などで注目馬とされている一部の良血馬でさえ「現状の評価はもう一つ」という話も聞かれ、晩成型の説も浮上しています。しかし悲観は無用です。コントレイル自身が2歳暮れのG1を勝ちながら、古馬になってからも成長してジャパンCを制するなど決して早熟一辺倒ではありませんでした。同様に産駒からも2歳戦から活躍馬こそ出るでしょうが、真価を発揮するのは3歳秋以降というタイプも少なくないかもしれません。現に初年度産駒は血統登録頭数で約130頭おり、その中には6月の新馬戦に間に合う馬もいる一方、ゆっくり成長を促している馬も多いようです。総じて「素直で扱いやすく品がある」と評される馬が多く、馬体のアウトライン(輪郭)の美しさは共通しているとのこと。一口馬主の出資目線では、即戦力というより長い目で成長を楽しめる素材が多い種牡馬といえるでしょう。
2025年クラブ募集馬に見るコントレイル産駒
コントレイルの初年度産駒(2023年生まれ)は各クラブの2025年度募集にも登場しています。今年は社台サラブレッドクラブ(社台TC)とサンデーサラブレッドクラブ(サンデーTC)で募集予定馬が発表され、サンデーTCで7頭、社台TCで2頭のコントレイル産駒がラインナップされています。いずれも良血馬揃いで、一口クラブ会員にとって出資候補として大いに魅力的な顔ぶれです。ここでは各募集馬のポイントをクラブ別に紹介します。(※馬名は出生時の仮称「母名の24」で表記。総額は募集価格、括弧内は性別)
サンデーサラブレッドクラブの注目募集馬(2025年)
シャンパンエニワンの24(牝) – 募集総額7,000万円。父コントレイル×母シャンパンエニワン (母父Street Sense)。母Champagne Anyoneは米G2ファンタジーステークス勝ち馬で、ケンタッキーオークスにも出走した良血牝馬です(※半兄に若駒ステークス勝ち馬のジュタがいます)。本馬は2月生まれの牝馬ですが馬格があり、気性も前向きで調教の飲み込みが早いようです。欧米の速力とコントレイルの持久力を兼ね備えた配合で、牝馬クラシックを狙える素材として注目されています。
アンドラステの24(牡) – 募集総額8,000万円。父コントレイル×母アンドラステ (母父オルフェーヴル)。母アンドラステは中央5勝を挙げ、うち1勝はG3中京記念という実績馬です。その2番仔にあたる本馬は、日本の名牝系(祖母は重賞勝ち馬エリンコート)に属し、筋肉量豊富でバランスの良い馬体が目を引きます。父と母父がともに無敗の三冠馬という超良血でもあり、完成度の高さと勝負根性は同世代でもトップクラスとの評価です。
フォースタークルックの24(牡) – 募集総額1億円。父コントレイル×母フォースタークルック (母父Freud)。今年のサンデーTC募集馬の中でも最高額タイとなる一頭で、母フォースタークルックは米国で12勝を挙げ、G1フラワーボウルSに優勝した名牝です。本馬はその末仔にあたり、母譲りのタフさと父譲りの瞬発力を兼ね備えた総合力の塊のような存在です。大型でスケールが大きく、将来はクラシックのみならず古馬G1戦線でも主役を張れる逸材との呼び声もあります。一口価格(1口250万円)と非常に高額ですが、それに見合うだけの夢を託せるでしょう。
社台サラブレッドクラブの注目募集馬(2025年)
グリーンバナナズの24(牝) – 募集総額4,000万円。父コントレイル×母グリーンバナナズ (母父Green Tune)。注目度抜群の一頭で、なんと半姉に英G1&米G1馬オーダリア(Audarya)がいます。オーダリアは2020年のBCフィリー&メアターフ(米G1)勝ち馬で、母グリーンバナナズにとって本馬はその妹にあたります。良血馬ながら価格は控えめで一口100万円という設定も魅力的です。馬体はコンパクトながら品があり、「素直で気品がある」典型的なコントレイル牝駒との評価です。芝中距離での切れ味勝負で光りそうで、クラブ募集全体でも穴人気の存在となりそうです。
カルティカの24(牝) – 募集総額6,000万円。父コントレイル×母カルティカ (母父Rainbow Quest)。母カルティカは仏G3勝ち馬で、日本で繁殖入り後にディープインパクトとの間に菊花賞馬アスクビクターモアを産んだ名繁殖です。本馬はその半妹にあたり、父がコントレイルに替わったことで更なる魅力が加わりました。半兄アスクビクターモアはクラシックで結果を出しましたが、本馬も遜色ない素質を秘めています。馬体は黒鹿毛で父譲りのしなやかさがあり、長めの距離で良さが出そうです。兄同様にクラシック三冠レースを狙える血統背景であり、将来的な繁殖価値も高い一頭でしょう。
以上が2025年度の社台・サンデー両クラブにおけるコントレイル産駒の募集馬一覧です。それぞれ血統背景や馬体の特徴に個性があり、「どの馬に出資すべきか」嬉しい悩みが尽きないラインナップと言えます。一口馬主クラブ会員としては、父コントレイルの持つ可能性と各馬の母系の魅力を天秤にかけながら、自分なりの出資判断を下すことになるでしょう。コントレイル産駒は総じて高額な募集が多いものの、その分リターン(夢)も大きいはずです。
ぜひ本記事の情報や視点を参考に、それぞれの馬の将来像を思い描きながら、納得のいく一頭を選んでいただければと思います。