【2025種牡馬考察】キズナ産駒の考察

種牡馬考察

はじめに

近年、日本競馬界で急速に存在感を高めている種牡馬がキズナです。ディープインパクトの後継と目され、2024年にはリーディングサイアー(総合・2歳部門)の双方で首位に立つ快挙を成し遂げました。種付け料も2024年の1,200万円から2025年には2,000万円へと大幅増額され、キタサンブラックやイクイノックスと並ぶ最高額帯に設定されています。なぜ今キズナに注目するのか――それは産駒の大活躍クラブ募集でも注目馬を送り出しているためであり、一口馬主の出資先選びにおいても見逃せない存在だからです。

現役時代の戦績と評価

2013年、日本ダービー(東京優駿)を制した直後のキズナ(鞍上は武豊騎手)。2着にはエピファネイアが入り、後に種牡馬としてもライバル関係が続くことになります。

キズナは2010年生まれのディープインパクト産駒で、現役時代は14戦7勝という優秀な戦績を収めました。特に3歳時(2013年)の活躍が光り、日本ダービー(G1)では武豊騎手とのコンビで1番人気に応えて優勝し、同年の最優秀3歳牡馬に選出されています。ダービー制覇後はフランス遠征を敢行し、凱旋門賞を目標に現地前哨戦のニエル賞(G2)で海外馬を撃破しました。迎えた本番の凱旋門賞(G1)では、日本馬として3歳での挑戦ながら大健闘の4着に入線します(勝ち馬トレヴ、2着オルフェーヴル)。3歳秋に国内外で示したその潜在能力と果敢な挑戦は高く評価され、日本競馬ファンに強い印象を残しました。

4歳時(2014年)のキズナは、春の産経大阪杯(GII)で復帰勝利を飾り、天皇賞(春)でも1番人気に支持されましたが結果は4着。その直後に骨折が判明し、凱旋門賞再挑戦は断念せざるを得ませんでした。療養を経て翌5歳(2015年)に復帰し、再び天皇賞(春)に武豊騎手とのコンビで挑みましたが、怪我の影響もあってか7着と敗北。その後、屈腱炎(じん帯の重度の炎症)を発症したため現役引退が発表されました。クラシック制覇に始まり欧州遠征まで果たしたキズナの現役時代は、ケガに泣かされた面もありつつ、「ディープインパクトの後継」に相応しい華やかな戦績と挑戦精神で彩られています。

スタッドインの背景と注目度

引退後のキズナは2015年10月に社台スタリオンステーションに繋養され、本格的に種牡馬生活に入りました。当初より期待と注目は非常に高く、初年度から交配申し込みが殺到しています。事実、同期のエピファネイアやフェノーメノらと共に種牡馬入りした際、ダービー馬キズナの初年度種付けはすでに余勢(追加分)まで満口となり、高い人気を誇ったと伝えられています。ディープインパクト産駒の後継として血統的価値が評価されたことに加え、武豊騎手とのドラマチックなダービー制覇や海外遠征での健闘が繁殖関係者からの支持につながりました。

種付け料は初年度(2016年)250万円からのスタートでしたが、産駒デビュー前から多数の良血繁殖牝馬と交配され、以降その成績に応じて段階的に値上がりしています。キズナは2020年に600万円、2021年に1,000万円、そして2024年には1,200万円と主要種牡馬の仲間入りを果たし、前述の通り2025年シーズンは2,000万円の大台に到達しました。この背景には後述する産駒の活躍があり、「ディープインパクトの後継種牡馬」として期待されたキズナが、実際にその期待に応える成果を出し始めたことが大きいと言えるでしょう。

種付け料と種付け頭数の推移

キズナのこれまでの種付け料と種付け頭数の推移を年別にまとめると以下の通りです。

年度種付け料(受胎確認後)種付け頭数
2016年250万円269頭
2017年250万円212頭
2018年350万円152頭
2019年350万円164頭
2020年600万円242頭
2021年1,000万円195頭
2022年1,200万円170頭
2023年1,200万円152頭
2024年1,200万円218頭
2025年2,000万円– (※)

※2025年は種付けシーズン中のため頭数未確定。

この表からも分かるように、初年度から200頭を超える牝馬と交配され、以降も毎年安定した人気を保っています。特に産駒がデビューした2019年以降は、勝ち上がり頭数の多さと安定感から生産者の信頼を集め、2020年には242頭という突出した種付け頭数を記録しました。2024年シーズンも218頭と高い水準にあり、2025年は更なる飛躍を期待して種付け料が跳ね上がったにも関わらず多くの交配相手を集めています。これはキズナ産駒の成績が年々充実し、市場評価が右肩上がりであることの証と言えます。

産駒の傾向と評価

2023年安田記念を制したソングライン。キズナ産駒を代表する一頭で、ヴィクトリアマイルとの春マイルGI連勝を達成し、JRA最優秀短距離馬にも選出された名牝です。

キズナ産駒は総じて芝適性が高く、距離の融通性も大きいという特徴があります。短距離マイル戦で卓越したスピードを見せたソングラインや、クラシック・長距離路線で活躍したディープボンド(G2勝ち多数、凱旋門賞出走)など、スプリントから長距離まで幅広い距離レンジで活躍馬を輩出しています。また一部にダート巧者もおり、例えばハギノアレグリアスはダート重賞のシリウスステークスを制し、東海S・平安Sでも2着に入るなど堅実に賞金を稼ぎました。3歳ダート路線でもハピ(レパードS3着、全日本2歳優駿2着)など上位争いする産駒が出ており、芝主体ながらダートでも一定の存在感を示しています。

産駒の仕上がり傾向については、早い段階から勝ち上がる総合力の高さが光ります。実際、キズナは2023年に初めてJRAの2歳リーディングサイアーに輝いており、重賞勝ち馬こそ出さなかったもののホープフルS3着のサンライズジパング、朝日杯FS3着タガノエルピーダ、東スポ杯2歳S2着シュバルツクーゲルなど重賞戦線で好走する2歳馬を次々送り出しました。2歳リーディングではエピファネイアとの競り合いを最終週に逆転したほどで、産駒の早期からの安定した走りが際立っています。これはキズナ産駒の勝ち上がり率の高さとも関連しており、「未勝利で終わる馬が少ない」という点は一口馬主にとって魅力的です。実際にある評論では、エピファネイア産駒が「ホームランか三振か」の極端なタイプであるのに対し、キズナ産駒は「ヒットを量産する3番打者タイプ」と評されています。派手さこそエピファネイア産駒に一歩譲るものの、安定して多くの産駒が勝ち星を上げ、コンスタントに活躍馬を送り出しているという評価です。

一方でG1レベルの大物については、これまで牝馬からソングライン(安田記念連覇、ヴィクトリアマイルなど)やアカイイト(エリザベス女王杯)といった馬が出ているものの、牡馬のクラシック制覇にはあと一歩届かない状況が続いていました。しかしその状況も変わりつつあります。2024年にはジャスティンミラノが皐月賞をレコードで制し、キズナ産駒に初めて牡馬クラシックタイトルをもたらしました。キズナ自身が成し遂げられなかった牡馬クラシック制覇を産駒が果たしたことで、「ついに後継種牡馬たり得る大物牡馬が現れた」と評価され、大きな話題となりました。こうした近年の活躍もあり、キズナは2024年のJRAリーディングサイアー(総合部門)で堂々の1位に輝いています。

以上のように、キズナの産駒は「芝向きで距離万能」「2歳戦から活躍し勝ち上がり優秀」「重賞級も多数輩出」と、バランスの取れた優秀な成績を収めています。代表産駒には前述のソングライン、アカイイト、ディープボンドのほか、古馬混合重賞を勝ったレッドジェネシスや海外G1ドバイターフで2着したヴァンドギャルドなど多彩な名前が挙げられます。各世代でコンスタントに重賞ウイナーが現れており、今やキズナは日本を代表するリーディングサイアーの一角として揺るぎない評価を築きつつあると言えるでしょう。

2025年社台・サンデーTC募集馬の注目馬

キズナ産駒の好調ぶりは、一口馬主クラブの募集馬ラインナップにも表れています。2025年度の社台サラブレッドクラブおよびサンデーサラブレッドクラブの募集馬の中から、キズナ産駒の注目株2頭をピックアップして紹介します(募集番号は公式リストに準拠)。

  1. ルミナスパレードの24(牡) – サンデーサラブレッドクラブ募集番号2。父キズナ、母ルミナスパレード(母父シンボリクリスエス)。募集総額1億5,000万円という2025年クラブ募集最高価格の一頭で、全姉に安田記念連覇のソングラインがいる良血馬です。ソングラインは2022・2023年の最優秀古馬牝馬に選出された名馬であり、その全弟にあたる本馬にも早くから大きな注目が集まっています。馬体のサイズや雰囲気も姉に似ているとの声があり、マイル前後の芝GI戦線での活躍を期待する声が高い一頭です。
  2. ソーマジックの24(牡) – 社台サラブレッドクラブ募集番号42。父キズナ、母ソーマジック(母父シンボリクリスエス)。募集総額1億円。母ソーマジックはクイーンカップ勝ち馬で、産駒には半兄にチャレンジカップ連覇のソーヴァリアント(父オルフェーヴル)、半姉にフェアリーS勝ち馬ソライロ(父ネオユニヴァース)がいます。近親に活躍馬が多い良血らしく本馬もバランスの良い好馬体で、芝中距離での活躍を期待されています。ソーヴァリアントがあと一歩でGI制覇に届いていないだけに、「弟こそはクラシックを」と陣営・出資検討者共に期待を寄せる注目株です。

出資判断のヒントとまとめ

キズナ産駒に出資を検討する際のヒントとしては、まず「大崩れが少ない安定株」である点を押さえておきましょう。前述の通りキズナ産駒は勝ち上がり率が高く、未勝利引退となるケースが相対的に少ない傾向があります。一口馬主にとって、愛馬がまず1勝を挙げてくれることは非常に重要です。その点でキズナ産駒は「まず一つ勝ってくれる可能性が高い」種牡馬と言え、出資のリスクが比較的低い安心感があります。

一方で、さらなる高みであるクラシック制覇やGI制覇を狙う場合は、やはり母系の血統背景や価格帯にも注目すると良いでしょう。例えば前述したソングラインの全弟(ルミナスパレードの24)のように、名牝の仔・近親に活躍馬がいる良血・高額馬はそれだけ大舞台を狙える素質を秘めています。キズナ産駒全体の傾向として瞬発力やスピードに優れる反面、父ディープインパクト譲りのキレを最大限に引き出すには配合面でサンデーサイレンスのクロスが3×3と濃くなりがちな点も指摘されています。そのため、出資馬選びでは配合相手の特徴(スピード型かスタミナ型か、サンデーの血の濃さなど)を確認し、キズナの長所を伸ばせる組み合わせか見極めるのもポイントです。

総合的に見て、キズナは「大きなハズレが少なく当たりも十分狙える」理想的な種牡馬と評価できます。実際に2024年はリーディングサイアーを獲得するなど、産駒成績は年々充実の一途です。早期デビューからコツコツと勝ち星を重ね、古馬になっても成長を続ける産駒が多いので、じっくり馬を育てて長く楽しみたい一口馬主にも向いているでしょう。キズナ産駒への出資は、堅実さとロマンの両方を併せ持つ選択肢として有力です。ぜひ本稿の情報を参考に、「次代のソングライン」を探す旅に出てみてはいかがでしょうか。あなたの出資馬選びが素晴らしい“絆”を生むことを期待しています。