【2025種牡馬考察】キタサンブラック産駒の考察

現役時代の戦績と評価
キタサンブラックは20戦12勝(中央競馬)という優れた成績を残し、GⅠでは重賞7勝を挙げた名馬です。2014年菊花賞、2016~17年の天皇賞(春・2回)、2016年ジャパンカップ、2016・17年有馬記念、そして2017年大阪杯(GⅠ昇格初年度)などを制し、なかでも2017年有馬記念では武豊騎乗で逃げ切り、7つめのGⅠ制覇(歴代最多タイ記録)を果たしました。この勝利で生涯獲得賞金は約18.7億円となり、2016・17年にはJRA年度代表馬にも2年連続で選出される栄誉を得ています。
オーナーは演歌歌手の北島三郎氏(大野商事所有)で、同氏は「勝っても負けても『まつり』を歌う」と宣言し、勝利のたびに自身のヒット曲『祭り』の一節を披露することでファンの人気を集めました。こうした華々しい演出も相まって、キタサンブラックは競馬界で一種の社会現象となりました。
スタッドインの背景と注目度
2018年から社台スタリオンステーションで種牡馬入りし、基礎繁殖は大野商事(北島氏)が所有したまま60口のシンジケートを組成。総額13億5000万円での合計出資となりました。当初の種付料は500万円(前納・不受胎時返還)で130頭を集めましたが、2年目は400万円×110頭、3年目は400万円×92頭と人気は一時低調でした。評論家の須田鷹雄氏も「種付け料500万・130頭でスタートし、19年は400万・110頭に落ち、種牡馬としては人気薄だった」と指摘しています。
しかし2021年夏に初年度産駒がデビューし、それがイクイノックスをはじめ好成績を収めると評判は一変しました。その後は再評価が進み、2023年種付料1000万円に跳ね上がりカバー頭数も242頭に増加。さらに2024年は種付料2000万円に設定され、社台SS在位の中で最高額となっています。
種付け料と頭数
スタッドイン(2018年)から2025年までの年別種付け料と種付け頭数は以下の通りです(社台SS公式データより):
年度 | 種付け料(万円) | 種付頭数(頭) |
---|---|---|
2018 | 500 | 130 |
2019 | 400 | 110 |
2020 | 400 | 92 |
2021 | 300 | 102 |
2022 | 500 | 178 |
2023 | 1000 | 242 |
2024 | 2000 | 191 |
2025 | 2000 | – |
*(※2025年度は種付け料2,000万円、種付頭数は未公表)
産駒の傾向と評価
キタサンブラック産駒は芝・ダート問わず短距離から長距離まで幅広く適性を示しますが、母系の血統によってカラーが分かれます。欧州系芝血統を持つ牝系からはイクイノックスやソールオリエンスのような本格的な芝中距離型が生まれました。彼らは強力な末脚を誇り、特にイクイノックスは2023年の天皇賞(秋)で芝2000m1分55秒2のコースレコードを樹立。同じく中山芝2000mのレコードを持つクリスマスパレード(中山牝馬S)、小倉2000mレコードを持つガイアフォースもキタサンブラック産駒で、芝2000m前後で速い時計を出せるパワーが特徴です。2025年ダービー馬クロワデュノールが示したように、2000~2400m級のG1勝ち馬も輩出しています。
一方で、気性の面では活気のある“ハイテンション”な馬が多いと評されますが、その前向きな気性が推進力となって走りに結びつくと見られています。総じて産駒は芝適性が高く中長距離で活躍しやすい血統であり、早くから仕上がるタイプが多い点も出資家に好まれています。
2025年社台サンデーTC募集馬から注目の2頭
- アドマイヤローザの24(牡・芦毛・3/7生):父キタサンブラック、母アドマイヤローザは2014年エルフィンS2着馬でアドマイヤグルーヴ系の良血。距離適性・繁殖力に優れた牝系とキタサン血統の組み合わせで、中~長距離をこなす肉体が期待できます。カタログによれば馬体はバランス良く筋肉量も豊富で、動きも滑らかとの評価です。社台発表の募集額は8,000万円(一口200万円)で、人気が集中する父系として注目されます。
- プリンセスノーアの24(牝・黒鹿毛・4/24生):父キタサンブラック、母プリンセスノーアは米GⅠデルマーデビュータントS勝ち馬という実績馬。母方にサドラーズ系やミスプロ系が入っており、ダート適性も秘めた配合。カタログでは気性が素直で活気あると評され、前膝の形状や骨量の良さが強調されています。募集価格は7,000万円(一口175万円)で、母系由来のパワーと父の持久力が融合した、幅広い適性を見込める一頭です。
出資判断のヒントとまとめ
キタサンブラック産駒への出資を考える際は、「芝中長距離での活躍馬を狙いたいか」というポイントが重要です。実績馬(イクイノックス、ソールオリエンス、クロワデュノールなど)が示すように、高い能力を発揮する産駒がいる一方で、種付料・募集価格は高額です。
したがって、競走馬に対する上昇余地とロマンを重視できるオーナーに向いています。また、気性が高めでも前向きに走る馬が多いので、飼い方に理解のある方には魅力的と言えるでしょう。逆に、短距離専門や低予算で幅広く行きたい方には選択肢が限られるかもしれません。今後も2歳馬の活躍次第で人気は左右されますが、現在の繁殖牝馬相手で好結果を出している点からすると、当分は安定した支持を受ける種牡馬となるでしょう。以上、キタサンブラックの血統・産駒傾向を踏まえた上で、出資判断に役立ててください。