【種牡馬考察】アドマイヤマーズ産駒の考察

種牡馬考察

はじめに

近年の一口馬主クラブにおいて、「新種牡馬の評価」は出資判断の中でも特に悩ましいテーマのひとつです。現役時代の実績は申し分なくとも、種牡馬として成功するかどうかは別問題――そんな言葉を、競馬ファンであれば一度は耳にしたことがあるでしょう。

今回取り上げるアドマイヤマーズは、現役時代に朝日杯フューチュリティステークス、NHKマイルカップ、そして香港マイルと、国内外のG1を制した名マイラーです。父はダイワメジャー。スピードと勝負根性を武器に、2歳から古馬まで第一線で戦い続けたそのキャリアは、今なお高く評価されています。

そんなアドマイヤマーズが種牡馬入りして数年が経ち、いよいよ産駒の実力がはっきりと見え始めるフェーズに入りました。特に2025年、産駒のエンブロイダリーが牝馬二冠を達成したことで、アドマイヤマーズは一躍「結果を出した新種牡馬」として注目を集める存在となっています。種付け料の大幅アップや、セレクトセールでの高額取引が相次いでいる点からも、その評価の高まりがうかがえます。

本記事では、アドマイヤマーズの現役時代の実績をあらためて振り返りつつ、スタッドインの背景、種付け料と頭数の推移、産駒の傾向、そして代表産駒エンブロイダリーの活躍を中心に、種牡馬としての現在地を整理します。そのうえで、一口馬主目線で「どんなタイプの出資者に向く種牡馬なのか」「どこに期待できて、どこに注意すべきか」といった出資判断のヒントまで踏み込んで考察していきます。

アドマイヤマーズ産駒への出資を検討している方はもちろん、「最近評価を上げている理由を知りたい」「他の新種牡馬とどう違うのか気になる」という方にも、判断材料となる内容をお届けできればと思います。

1. 現役時代の戦績と評価

アドマイヤマーズは父ダイワメジャー、母ヴィアメディチという血統背景を持ち、2017年のセレクトセール1歳市場で近藤利一オーナーに5,200万円(税別)で落札されました。栗東・友道康夫厩舎に預託され、デビュー前から評判馬として注目を集めます。

2歳6月にデビューすると無傷の3連勝で朝日杯フューチュリティステークス(G1)を制覇し、この年の最優秀2歳牡馬に輝きました。朝日杯FSでは当時牝馬ながら圧倒的人気だったグランアレグリアを退け、2着馬に2馬身差をつける完勝劇でした。この勝利は近藤利一オーナーにとって最後のGIタイトルとなり、後に陣営は香港遠征時に近藤氏ゆかりのレストランで健闘を誓い合ったといいます。まさに馬も人も一丸となって勝ち取った勝利でした。

明け3歳ではクラシック路線にも挑戦。共同通信杯で初黒星を喫し、皐月賞は4着と惜敗しましたが、距離適性を考慮してマイル路線に戻ります。中2週で臨んだNHKマイルカップ(G1)では再びグランアレグリアとの対戦が注目され、結果はアドマイヤマーズが半馬身差で勝利しました。平成から令和へ元号が変わって最初のJRA・G1となった同レースを制し、鞍上のM.デムーロ騎手が「令和最初のGIを勝てて最高に気持ちいい」と喜んだエピソードは有名です。

秋には海外遠征を見据え、富士ステークスで9着に敗れるアクシデントもありましたが、目標の香港マイル(G1)で巻き返します。クリストフ・スミヨン騎手との新コンビで挑んだ香港マイルでは、地元香港の絶対王者ビューティージェネレーションや同世代の春秋マイル王インディチャンプら錚々たるメンバーを相手に堂々たるレース運びを披露しました。直線で内のビューティージェネレーションを差し切り、最後は迫るワイククとの叩き合いを制して優勝。この勝利は香港マイルの歴史でも初の3歳馬による優勝という快挙であり、亡き近藤オーナーへの最高の手向けともなりました。

4歳時もドバイターフ遠征計画がありましたがレース中止(コロナ禍)により叶わず、帰国後は安田記念6着、秋はスワンS3着からマイルチャンピオンシップ3着と健闘します。そして連覇を狙った香港マイル(4歳暮れ)ではゴールデンシックスティの前に3着に敗れました。このレースをラストランに現役引退が発表され、友道調教師は「海外遠征でも頑丈さを見せてくれた。この丈夫さを子供たちにも伝えて活躍馬をたくさん出してほしい」とコメントしています。

通算成績は国内11戦5勝、海外2戦1勝、生涯G1勝利3つ(朝日杯FS、NHKマイルC、香港マイル)という輝かしい実績でした。マイルを中心にスピードと勝負根性を発揮し続け、「令和最初のGIホース」「近藤利一氏最後の大物」として競馬ファンの記憶に残る存在です。

2. スタッドインの背景と注目度

アドマイヤマーズは4歳末の香港遠征を最後に現役を退き、5歳となった2021年から社台スタリオンステーションで種牡馬入りしました。スピードと実績を買われての種牡馬入りであり、父ダイワメジャーの後継種牡馬として大きな期待が寄せられました。父のダイワメジャー自身、マイルGIを複数制し種牡馬としても多数の活躍馬を出しましたが高齢となっており、その直系後継としてアドマイヤマーズが名乗りを上げた形です。

スタッドイン当初の種付け料は300万円と、同世代の新種牡馬の中では手頃な設定でした。初年度は115頭もの繁殖牝馬を集め、名門ノーザンファームをはじめ多くの牧場が交配を実施。2年目は種付け料がやや下がった影響もあってか頭数107頭とやや落ち着きましたが、それでも一定の繁殖牝馬を確保し続けました。産駒がデビューする前の段階では「マイル巧者の後継」という期待と同時に「距離の壁はどうか」といった声もあり、様子見の生産者もいたようです。しかし初年度産駒のデビュー前評判が上向くと2023年には129頭、2024年も125頭と再び種付け頭数は増加傾向を見せます。

迎えた2024年、いよいよ初年度産駒がデビューすると、早くも複数の勝ち上がり馬を出して注目度が一気にアップしました。すると翌2025年には種付け料が250万円から500万円へと一気に倍増し、それにも関わらず種付け頭数は自己最多の162頭に達しています。これは初年度の約1.5倍という盛況ぶりで、生産界からアドマイヤマーズ産駒への期待が高まっている証拠と言えるでしょう。「ダイワメジャーの後継がようやく現れて良かった」と語る生産者の声もあり、今や注目度は世代トップクラスの新進種牡馬です。

血統的には、父系にサンデーサイレンス系のスピード、母系に欧州血統(母父Medicean)由来のしなやかさを併せ持つ点が魅力です。サンデー系種牡馬としては配合の幅も広く、クロフネやストームキャット系など多様な繁殖牝馬との組み合わせが試みられています。友道調教師の言葉通り「丈夫さ」を受け継ぐ産駒を多数出すことができれば、今後さらに評価が高まっていくでしょう。

3. 種付け料と頭数の推移

アドマイヤマーズの種付け料および種付け頭数の推移は以下の通りです。

年度種付け料(受胎条件)種付け頭数
2021年300万円115頭
2022年250万円107頭
2023年250万円129頭
2024年250万円125頭
2025年500万円162頭

初年度は300万円でスタートし、その後一旦250万円に減額されています。これは新種牡馬によく見られる「様子見」の傾向で、産駒の出来を見極めたい牧場側の意図もあったと推察されます。しかし2024年デビュー組の活躍により2025年は種付け料・頭数ともに大きく跳ね上がりました。特に2025年シーズンは種付け料500万円にも関わらず162頭が集まっており、産駒成績が優秀だったことから配合希望が殺到したようです。これは同世代のサートゥルナーリアやルヴァンスレーヴなど他の新種牡馬と比べても屈指の人気ぶりです。

また産駒の市場評価も上昇しています。2023年のセレクトセール当歳市場ではアドマイヤマーズ産駒は平均約3,600万円で取引され、最高価格は5,720万円に達しました。さらに初年度産駒が活躍した後の2025年セレクトセール1歳市場では、母アンセランの牝馬が7億0400万円(税込約7,744万円)で落札されるなど高額取引が続出しています。同じく母エディスバーグの牡馬も6億8200万円で取引されるなど、複数の産駒が7000万円前後という高値で落札されました。これらの数字からも、エンブロイダリーの牝馬二冠達成以降に市場関係者が抱くアドマイヤマーズ産駒への期待の大きさがうかがえます。

4. 産駒の傾向と評価

初年度産駒は2024年にデビューし、早くも素質馬を輩出しました。中でも牝馬のエンブロイダリーは桜花賞と秋華賞を制して2025年の牝馬二冠を達成し、父アドマイヤマーズに初のJRAG1タイトルをもたらしています。エンブロイダリーは父譲りのマイル適性に加え、2000mの秋華賞も勝てる成長力と底力を示しました。母ロッテンマイヤー(父クロフネ)との配合はサンデーサイレンス系×ヴァイスリージェント系の組み合わせで、配合面でも好結果を引き出した例と言えるでしょう。

その他の産駒も芝の短中距離路線で続々と頭角を現しています。例えばナムラクララは重賞未勝利ながら2025年の京阪杯(G3)を勝利し、短距離重賞ウイナーの仲間入りを果たしました。同馬は母サンクイーンII(父ストームキャット)という血統で、やはり米国型のスピード血統との相性の良さを感じさせます。さらに、オープンクラスで活躍するテレサルージュラナキラ(東京サラブレッドクラブ所属の牝馬)、牡馬ではマーズオデッセイアルバンヌといった名前が挙がっており、エンブロイダリー以外にも世代戦線で目立つ産駒が複数誕生しました。

全体的な産駒の傾向として、芝向きのスピードと早熟性がまず挙げられます。2歳戦から活躍できる産駒が多く、アドマイヤマーズ自身の2歳GI制覇の資質がしっかり伝わっている印象です。実際、産駒のJRA重賞初勝利もエンブロイダリーが3歳春のクイーンC(G3)で記録しており、早い時期から活躍馬が出ました。一方で距離適性はマイル前後が中心で、現時点では2400m以上の長距離戦で結果を残した例はまだありません。クラシック三冠(牡馬三冠・牝馬三冠)を狙うにはスタミナ面の裏付けが今後の課題とも言えますが、マイルから中距離(2000m前後)までならGI級の能力を引き出せることはエンブロイダリーが証明したといえるでしょう。

気性面については、大きな問題を報じられた産駒は少なく、総じて前向きでレースセンスの良い馬が多いようです。父ダイワメジャーも闘志あふれる走りを見せた馬でしたが、アドマイヤマーズ産駒も接戦で抜群の勝負根性を見せる場面があり、「他馬に並ばれてもしぶとい」という評価も聞かれます。また友道師が強調した丈夫さの点でも、エンブロイダリーが3歳シーズンを大きな故障無く走り抜いたことや、ナムラクララが連戦に耐えている点などから、今のところ及第点と言えそうです。

こうした活躍により、アドマイヤマーズは2025年のJRAサイアーランキング(2ndクロップ、第二世代種牡馬)でサートゥルナーリアに次ぐ第2位に付けています。これは同世代の種牡馬ナダル、ルヴァンスレーヴ、モズアスコットなどを上回る成績で、産駒の総合力の高さを示すものです。今後さらに産駒の世代が増えるにつれて、スプリントからマイル路線のみならず中距離GI戦線でも活躍馬が出てくれば、種牡馬としての評価は不動のものになるでしょう。

5. 出資判断のヒントとまとめ

アドマイヤマーズ産駒への出資を検討する際、「早期から活躍を期待できる芝馬が欲しい」という方には非常に魅力的な種牡馬と言えます。新種牡馬ながら初年度から桜花賞馬を輩出した実績は大きく、2歳戦・マイル路線で結果を出しやすい傾向は一口馬主にとって嬉しいポイントでしょう。実際、エンブロイダリーのようにデビュー2戦目で新馬勝ち→重賞制覇とトントン拍子に出世するケースもあり、スピードと勝負根性に優れた産駒が多いことから、初めて出資する方や早い時期の勝ち上がりを重視する方にも向いています。

一方で「クラシック三冠や長距離GIを狙いたい」という玄人志向の出資者には、現時点ではやや距離適性に物足りなさがあるかもしれません。マイル~中距離までの活躍例は豊富ですが、まだ2400m以上で突出した産駒が出ていないため、ダービーや菊花賞向きの大器を求める場合は他の長距離型種牡馬の産駒と比較検討する必要があります。ただし配合次第では距離の壁を超える可能性もあり、例えばスタミナ血統の繁殖牝馬との組み合わせで新たな可能性が生まれる余地は十分にあります。事実、父がマイラーでも母系次第でクラシックホースが出る例は競馬界で珍しくなく、アドマイヤマーズ産駒も今後そうした“大物”が登場する期待を秘めています。

血統面で見ると、クロスや配合相性にも注目したいところです。サンデーサイレンスの血を持つアドマイヤマーズは、母系にサンデーの血を持たない繁殖牝馬との相性が良い傾向にあります。実際、成功例のエンブロイダリー(母父クロフネ)やナムラクララ(母父Storm Cat)はいずれもサンデー過剰にならない配合です。クラブ募集馬のカタログでも、母系に米国型や欧州型のスピード血統を持つアドマイヤマーズ産駒は特に注目してみると良いでしょう。良血馬や高額馬が必ずしも走るとは限りませんが、同世代の他種牡馬産駒に比べて総じて安定感があり、素質を引き出しやすい印象です。

価格面では、エンブロイダリーの活躍以降は市場評価が上がったため、一口クラブで募集されるアドマイヤマーズ産駒も募集価格がやや高めに設定されるケースが増えるかもしれません。しかしそれは裏を返せば**「それだけ期待値が高い」ということでもあります。実績の無い新種牡馬に博打的に出資するよりは、すでに一定の成果を出しているアドマイヤマーズ産駒はリスクが読める分、出資判断がしやすいでしょう。特に牝馬二冠馬が出たことで牝駒の評価も高く、クラブでも「将来繁殖入りを見据えた活躍牝馬狙い」**という観点でアドマイヤマーズ産駒の牝馬に注目する動きも出てきそうです。

総括すると、アドマイヤマーズはスピードと早期成功をキーワードに台頭してきた新進気鋭の種牡馬です。マイル前後の距離であれば親譲りの能力を存分に発揮する産駒が多く、一口馬主にとってはデビューから早い段階で楽しみを味わえる可能性が高いでしょう。今後は産駒数の増加に伴い層の厚さも増してくるため、「当たり」を引けるチャンスも広がっていくはずです。もちろん競走馬ですから絶対はありませんが、初年度から二冠馬を送り出した勢いとポテンシャルは本物であり、**「令和のマイル王の血を自分の愛馬に」**というロマンを託すには十分と言えます。今後さらに飛躍を遂げ、父系を発展させる存在になることを期待しつつ、アドマイヤマーズ産駒への出資プランを練ってみてはいかがでしょうか。