【最新版】テンソヴリンズ(Ten Sovereigns)産駒の特徴と評価

一口馬主ブログ「ひとくち放牧。」のアイキャッチ画像

テンソヴリンズ(Ten Sovereigns)は、2018年のミドルパークS、2019年のジュライカップとG1を2勝したスプリンターです。エイダン・オブライエン厩舎、馬主はクールモア。種牡馬入りの際には「No Nay Neverの最良の産駒」と紹介され、後継種牡馬として売り出されました。

ところが2026年の今、状況はまったく違っています。テンソヴリンズは2024年末でクールモアを去り、2025年からトルコで供用されています。クールモアの2026年ラインナップ21頭に名前はなく、公式サイトのページも消えました。

そして皮肉なことに、放出された直後の2025〜2026年に、北米で立て続けに3頭のG1馬を出しています。この記事では現役8戦を年齢ごとに追ったうえで、種付料の推移が語るクールモアの評価、そして日本との意外な接点までを一次情報にあたって整理しました。

テンソヴリンズ(Ten Sovereigns)とはどんな馬か

項目内容
英語表記Ten Sovereigns
生年月日2016年3月28日
産地アイルランド
毛色・性別鹿毛・牡
No Nay Never(ノーネイネヴァー)
Seeking Solace(シーキングソレス)
母父Exceed And Excel
調教師Aidan O’Brien
馬主クールモア(Tabor/Smith/Magnier)
通算成績8戦4勝(G1・2勝)
主な勝ち鞍2018年 ミドルパークS(英G1)、2019年 ジュライカップ(英G1)
獲得賞金£749,220
繋養先クールモアスタッド(愛・2020〜2024年)→ チェリキオール・スタッド(トルコ・2025年〜)
出典:JBISサーチ、Racing Post、Thoroughbred Daily News、トルコジョッキークラブ公式

現在もトルコジョッキークラブの公式馬名簿に現役登録があり、2026年8月時点で存命・供用中です。馬主はアリ・ルザ・チェリキオール氏ほか。

現役時代の来歴|8戦4勝、2歳無敗からジュライカップまで

2歳(2018年)|3戦3勝、5週間でG1へ

年月日競馬場レース名(英語表記)距離馬場着順着差騎手相手
2018.8.25カラ(愛)未勝利戦(Irish Stallion Farms EBF Maiden)未勝利6F(約1,200m)1着7馬身D.オブライエン
2018.9.1カラ(愛)ラウンドタワーS(Round Tower Stakes)G36F良〜稍重1着3¾馬身D.オブライエン
2018.9.29ニューマーケット(英)ミドルパークS(Juddmonte Middle Park Stakes)G16F1着½馬身D.オブライエンJash
デビュー日は資料により8月25日と26日で分かれます。騎乗はすべてドンナカ・オブライエン

カラの未勝利戦を7馬身差で圧勝し、中1週で同じカラのG3を3¾馬身差。さらに4週後にはニューマーケットでミドルパークS(G1)を制しました。デビューから5週間でG1馬という、いかにもクールモアらしい進み方です。

エイダン・オブライエンは当時「非常に速い馬。マイル以上はおそらく持たない」と語っていました。この見立ては翌年、そのまま的中します。

3歳(2019年)|5戦1勝、ギニー敗戦からジュライカップへ

年月日競馬場レース名(英語表記)距離馬場着順着差騎手相手
2019.5.4ニューマーケット(英)英2000ギニー(Qipco 2000 Guineas)G11マイル5着4.51馬身R.ムーア勝ち馬 Magna Grecia
2019.6.21アスコット(英)コモンウェルスC(Commonwealth Cup)G16F稍重4着2.38馬身R.ムーア勝ち馬 Advertise
2019.7.13ニューマーケット(英)ジュライカップ(Darley July Cup)G16F1着2¾馬身R.ムーア2着 Advertise
2019.8.23ヨーク(英)ナンソープS(Coolmore Nunthorpe Stakes)G15F(約1,000m)6着7.50馬身R.ムーア勝ち馬 Battaash(コースレコード)
2019.10.19ランドウィック(豪)ジ・エベレスト(The TAB Everest)1,200m12着5.0馬身R.ムーア勝ち馬 Yes Yes Yes
2019年9月7日のヘイドック・スプリントCは馬場悪化のため回避(非出走)

3歳緒戦はクラシックの英2000ギニー。1マイルは明らかに長く5着でした。次のコモンウェルスCも4着。しかしここで終いの脚が評価され、路線を6ハロンに絞ります。

そして迎えたジュライカップで一変します。ライアン・ムーア騎乗で2¾馬身差の完勝。アスコットで先着を許していたAdvertiseを完全に逆転しました。エイダン・オブライエンは「最終追い切りは4ハロンすべて11秒を切った」と明かしています。

その後は5ハロンのナンソープS(バタアシュがコースレコード勝ち)で6着、豪州のジ・エベレストで12着。このエベレストがラストランとなりました。

種牡馬入りの経緯と、クールモアが下した評価

引退の発表はエベレストのわずか12日後、2019年10月31日でした。父No Nay Neverと同じクールモアで2020年から供用開始。

クールモアのデイヴィッド・オラフリンは「史上2番目に速いジュライカップ勝ち馬であり、史上3番目に速いミドルパークS勝ち馬」と紹介し、料金発表時には「当場の若きスター種牡馬No Nay Neverの最良の産駒」と位置づけました。父系直系で7代連続して2歳時にG1を勝った血統、という点も強調されています。

種付料の推移が語るもの

種付料繋養先
2020(初年度)€25,000クールモアスタッド(愛)
2021€20,000クールモアスタッド
2022€17,500クールモアスタッド
2023€17,500クールモアスタッド
2024€17,500クールモアスタッド
2025非公表(Private)チェリキオール・スタッド(トルコ)
2026応談(o/a)チェリキオール・スタッド(トルコ)
出典:Racing Post「Fee History」。南半球では2020年にニュージーランドのValachi Downsへシャトル供用(NZ$20,000+GST)
種付頭数
2020(初年度)214頭
2021173頭
2022152頭
2023未確認
2024(最終年)72頭
2024年の72頭はThoroughbred Daily News(2024年12月6日)。2020〜2022年は二次情報のため参考値

数字が語ることは明快です。€25,000(期待)→ €17,500(停滞)→ 売却(見切り)。種付頭数も214頭から72頭へ、3分の1になりました。

決定打になったのは兄弟種牡馬との競争だったと見られます。クールモアはNo Nay Never直子の後継枠としてBlackbeardLittle Big Bear(ともに2026年€17,500)を自場に残し、テンソヴリンズを放出しました。

2024年12月、トルコへ

2024年12月6日、ブラッドストックエージェントのCem Özbelge氏が、トルコのオーナーブリーダーアリ・ルザ・チェリキオール氏の代理で購買したことが報じられました。12月中旬に検疫を経てトルコへ輸送され、2025年からチェリキオール・スタッドで供用されています。

種牡馬成績|放出後に北米でG1・3勝

ここが今回いちばん面白いところです。クールモアが見切った直後から、産駒が北米で結果を出し始めました。

産駒(英語表記)生年母(母父)G1勝ち鞍日付
Zulu Kingdom2022Zindziswa(Smart Strike)アメリカンターフS(チャーチルダウンズ)2025.5.3
メイカーズマークマイルS(キーンランド)2026.4.10
Lush Lips2022Lamyaa(Arcano)QエリザベスII世チャレンジC(キーンランド)2025.10.11
Balantina2023Balankiyla(Montjeu)BCジュヴェナイルフィリーズターフ(デルマー)2025.10.31
JBISサーチ「主な産駒」より。G1勝ち産駒3頭はすべて北米での勝利
  • Zulu Kingdomは2025年5月、ケンタッキーダービー当日にG1へ昇格したばかりのアメリカンターフSを勝ち、テンソヴリンズ初のG1産駒になりました。2026年4月にはメイカーズマークマイルSでG1・2勝目。通算9戦7勝、賞金123万ドル。チャド・ブラウン厩舎です。
  • Lush Lipsは2025年10月にQエリザベスII世チャレンジCを制覇。その直後のキーンランド11月セールで370万ドルで取引され、同セールのトップになりました。
  • Balantinaは2025年10月末、単勝20倍でBCジュヴェナイルフィリーズターフを差し切り勝ち。管理するのはドンナカ・オブライエン——テンソヴリンズの2歳時の主戦騎手です。

つまり3頭のG1勝ちのうち、2025年10月以降のものはすべて売却後の出来事です。「クールモアの見切りが早すぎたのではないか」という論調が出るのも無理はありません。

出走頭数勝馬頭数勝馬率重賞勝ち
2023(初年度世代の2歳)82頭27頭33%1頭
2024140頭57頭41%1頭
Thoroughbred Stallion Guide の集計より

初年度産駒は2021年生まれ、2歳デビューは2023年。1歳市場では好調で、2022年のGoffs Sportsman’s Saleで牝馬が€300,000で落札され、15年ぶりに同セールのレコードを更新しました。ただし競馬場での成績は「悪くはないが、€25,000の看板に見合う爆発力はなかった」というのが率直なところです。

父No Nay Neverはクールモアの現エース

No Nay Never(6戦4勝、2013年モルニー賞G1)は、2026年の種付料€100,000でクールモア・アイルランドの全種牡馬中トップです。産駒にTrue Love(2026年英1000ギニー)、Blackbeard、Little Big Bear、Alcohol Free、Meditate など。

テンソヴリンズは種牡馬入り時点で「No Nay Neverの最良の産駒」と位置づけられましたが、後継の座はBlackbeardとLittle Big Bearに譲る形になりました。

日本との関係|産駒はゼロ、しかし全妹がノーザンファームにいる

まず結論から。日本で走ったテンソヴリンズ産駒は1頭もいません。

確認項目結果
JBIS 産駒一覧(中央・地方・全世代)該当なし
JBIS サイアーランキング該当なし(日本での収得賞金ゼロ)
JBIS 市場取引情報(セレクトセール等)該当なし
一口馬主DB クラブ馬(全24クラブ・2017〜2024年産)0頭
日本への輸入産駒0頭
JBISサーチ(中央2026年8月23日/地方8月29日現在)、一口馬主DB(2026年8月29日現在)

社台・ノーザンファームが繁殖牝馬を送った形跡もありません。トルコへ移籍した今、今後もその可能性は低いでしょう。

ただし全妹イーデンキーはノーザンファームの繁殖牝馬

産駒はゼロですが、テンソヴリンズの全妹が日本にいます。ここが一口馬主として押さえておく価値のあるところです。

イーデンキー(Eden Quay)は2017年生まれ、父No Nay Never × 母Seeking Solaceでテンソヴリンズと同じ配合。アイルランドで8戦1勝を挙げたあと日本で繁殖入りし、産駒はすべて安平産=ノーザンファーム生産です。

馬名生年馬主・クラブ厩舎成績
ピンパンポン2022Wootton Bassett総武開発船橋・阿井正雄9戦2勝/131万円
グリオンヴール2023エピファネイアキャロットファーム美浦・宮田敬介5戦1勝/2,126万円
(未命名)2024キタサンブラック
2025コントレイル不受胎
2026イクイノックス不受胎
JBISサーチ 繁殖牝馬情報より。父の顔ぶれがノーザンファームの評価を示しています

配合相手を見てください。ウートンバセット → エピファネイア → キタサンブラック → コントレイル → イクイノックス。ノーザンファームがこの牝系をどう評価しているかが、そのまま出ています。ただし2025年・2026年は連続で不受胎でした。

グリオンヴール(キャロットクラブ)

項目内容
血統父エピファネイア × 母イーデンキー(母父No Nay Never)
募集価格7,000万円/400口/1口17.5万円
クラブキャロットクラブ
厩舎美浦・宮田敬介
生産ノーザンファーム
成績5戦1勝/獲得2,126万円(1勝クラス)
デビュー2025年8月23日 札幌2歳新馬(芝1500m)をルメール騎乗・1.2倍で1.2秒差の圧勝
一口馬主DB(2026年8月29日現在)

つまり「テンソヴリンズ産駒には出資できないが、テンソヴリンズの甥には出資できる」というのが、2026年時点の正確な日本との関係です。ほかに全弟スズカソブリンも日本に輸入され、名古屋で2戦1勝を挙げています。

血統|父の力で走った馬という評価

Seeking Solaceは仏で7戦1勝、リステッド2着が最高。アンドレ・ファーブル厩舎で、3歳時は10ハロン未満を一度も走っていない完全な中距離馬でした。そこから6ハロンのG1を勝つスプリンターが出たわけで、父No Nay Neverのスピードが強く出た形と読めます。

母系についてはThe Irish Fieldが「平凡な牝系(an unremarkable female line)」と評しているのが実際のところです。近親に目立つ活躍馬はいません。

テンソヴリンズの成功後、Seeking SolaceにはNo Nay Neverが4年連続で配合されました(2017〜2020年)。しかし全兄弟5頭から重賞級は出ていません。テンソヴリンズが突出した1頭だったということです。

「父の力で走った、牝系の裏づけが薄い種牡馬」——この見方が当初からあり、種付料の伸び悩みと早期放出につながった側面は否めません。一方で日本のノーザンファームは全妹を買って一流種牡馬を配合し続けている。この温度差は興味深いところです。

まとめ

テンソヴリンズ(Ten Sovereigns)は8戦4勝、ミドルパークSとジュライカップでG1を2勝したスプリンターです。デビューから5週間でG1を勝ち、3歳では英2000ギニーで距離の壁にぶつかったあと、6ハロンに絞ってジュライカップを制しました。

種牡馬としては€25,000でスタートし、€17,500まで下がって2024年末にクールモアを放出。2025年からトルコで供用されています。種付頭数も214頭から72頭へ落ちました。

ところが放出直後の2025〜2026年に、北米でG1を3勝。Zulu Kingdom、Lush Lips、Balantina。特にBalantinaのブリーダーズカップ制覇は売却後の出来事です。評価はまだ確定していないと見るべきでしょう。

日本では産駒ゼロ、クラブ募集もゼロ。ただし全妹イーデンキーがノーザンファームで繁殖入りしており、その仔グリオンヴールがキャロットクラブで7,000万円で募集されています。日本の一口馬主がこの血統に触れる経路は、いまのところそこだけです。

更新履歴

  • 2026年8月29日:ウートンバセットとの2頭同居記事から分割し、テンソヴリンズ単独の記事として新規作成しました。現役全8戦を年齢別の表に整理、種付料と種付頭数の推移、北米でのG1・3勝、日本との関係(全妹イーデンキーとグリオンヴール)を追加しています。
  • 2026年8月29日(重要な訂正)テンソヴリンズは2024年末でクールモアを去り、2025年からトルコのチェリキオール・スタッドで供用されています。クールモアの2026年ラインナップに名前はなく、公式ページも削除されています。従来の「クールモア繋養」という記述は現状と異なります。

関連記事

出資馬選びに迷ったら

「この父の産駒はどう走るのか」を、産駒成績データ・勝ち上がり率・活躍馬・各クラブの募集状況までまとめています。データは定期的に更新中です。

【種牡馬考察まとめ】一口馬主のための種牡馬ガイド(28本を目的別・データ順に整理)

  • 「まず1勝してほしい」「クラシックを夢見たい」など目的別のおすすめ種牡馬
  • 2026年リーディング順の種付料・勝ち上がり率・EI比較表
  • 産駒デビュー前の種牡馬(イクイノックスほか)の募集状況

クラブ別の募集馬検討や見学ツアーのレポートは 一口馬主カテゴリ にまとめています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA